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お客様からの感謝を可視化し働く人がきちんと評価される世の中へ
専用QRコードを利用したシンプルな手法でサービスへの顧客満足度を測定。AIで可視化された客観的な評価が、スタッフの働きがいを高める。
PROJECT:
「いいね」感覚でサービスの質を評価
- 今回の認定プロジェクトである「OTENTO」についてご説明ください。
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鳥居本
「OTENTO」は、飲食店やアパレル、美容室、ホテルなどさまざまなサービス業において接客への評価をお客様からダイレクトにフィードバックしてもらえるシステムです。お客様は店内に掲示されたQRコードを読みとるだけで専用ページにアクセスして気軽にメッセージを送信することができ、チップルと呼んでいるチップを電子決済で送ることも可能です。SNSの「いいね」感覚で、お客様からの評価を集めることができるわけです。
- 分かりにくかった接客評価をダイレクトに受け取ることができると。
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鳥居本
そうです。さらに、いただいたメッセージを自然言語処理AIが独自アルゴリズムで解析して分かりやすいレポートにまとめたり、ポイントとして数値化することもできます。これにより職場での努力や工夫を見える化でき、スタッフの正当な評価やモチベーションに繋げていくことができる。いわばスタッフ一人ひとりのがんばりを「お天道様は見ていてくれる」システムなんです。
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転職でキャリアがリセットされる現状に疑問
- なぜこのサービスを開発しようと思われたのでしょう。
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鳥居本
もともと私は大手の人材サービス会社に勤務していたのですが、まだまだ職場での働きを客観的に評価するシステムが存在していない現状に疑問を持っていました。特に非正規雇用の方はキャリアがステップアップしていかない。職場が変わるたびにリセットされてしまう。これをきちんと評価するためにも、その人が集めている周囲からの“感謝”を目に見える形にしようと思ったわけです。
- 「OTENTO」に対する現在の反響はどうですか。
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鳥居本
ビジネスとしてはまだまだアーリーという段階ですが、月に1,000件以上のメッセージがやり取りされています。すでに1,500社ほどがこのシステムを利用してくれていて、そのうち113社がサブスク形式の有料契約を結んでくれています。
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「スタッフのサービス」をお店選びの新たな基準に
- システムの今後の発展はどのようにイメージされていますか。
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鳥居本
まだリリースのタイミングをはかっている段階ですが、今後は専用アプリをダウンロードしてもらう展開を考えています。たとえばグルメ検索サイトだと、マップからメニューや料金、営業時間などでショップを検索表示しますよね。これを「スタッフのサービス」を基準にした検索スタイルにしようと。さまざまな選択肢がある中で、サービスの優秀なスタッフがいるお店を選ぶ。そんなスタイルを定着させるシステムをスタートさせる予定です。
- それは従来にないまったく新しい視点ですね。
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鳥居本
お客様からのフィードバックをスコアリングできる「OTENTO」ならではのサービスだと思います。また、こうしたデータは転職だけではなく学生の就活にも活用できるのではないかと考え、大学など教育機関にもアプローチを開始しています。学生にとってアルバイトは重要ですが、ただお金を稼ぐためではなく、アルバイト先での勤務態度が良い評価になれば就職活動での明確なアピールポイントになると思うんです。
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- 学生にとってはアルバイトがインターンシップのような経験になると。
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鳥居本
企業にとっても従業員採用はどんどん難しくなっています。また、思想信条の自由に反するという理由から、採用面接では相手の趣味や嗜好を質問するのは禁じられている時代です。外資系企業ではリファレンスシートといって、前職の上司二人にレポートを提出してもらう制度がありますが、日本の企業にはまだまだなじまない。
新卒であれ、中途であれ、履歴書といっしょに「OTENTO」の評価データを提出する。それによって、採用側は客観的なデータから採用の判断ができる。求職者もこれまでの働きを評価してもらえる。そんな社会を実現することが目標です。
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今後は製造や建設など他業種にも展開
- サービス業以外の分野への展開はどうですか。
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鳥居本
集められた評価をAIによって分かりやすく見える化するというシステムの根幹は、マーケティングでも活用できると思います。マーケティングは「売れそうな顧客」を見つけることに主眼がおかれがちですが「売れている顧客」からの評価を製品開発に活かすような発想が可能になると思います。生産現場とのコミュニケーションツールとしても活用すれば、より生産効率に優れた製品を企画することができます。
- なるほど企画に新しい視点をもたらすわけですね。
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鳥居本
これは実証実験の段階ですが、建設現場の就労環境改善に役立てるツールとしても検討しています。大手建設会社はいくつもの建設現場を抱えていて、そこでは下請け企業の職人さんなど何十人ものスタッフが即席のチームを組んで作業します。現場ごとに異なるさまざまな環境が、作業効率に大きく影響するわけです。
そこでチーム全員の声を月に一回集めて、AIが解析したサマリーレポートにまとめあげる。すると作業効率に影響している問題や課題が明確になってきます。もちろん従来も業務日報などはありましたが、その内容を客観的にまとめあげるには相当の時間と労力を要します。それが「OTENTO」なら即座にレポートにまとめられる。サービス業に限らず今後の応用分野はまだまだ広いと考えています。
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