ヘルスケアビジネスにおける顧客経験デザイン
ヘルスケアビジネスを開発から運営まで推進してくために最も重要なのは、顧客経験をどこまでこだわって、どう創っていくかのアプローチです。これは顧客との関係性品質でしか勝負できない時代になったとも言えます。ではその理由と対策のヒントを整理していきましょう。
コネクテッド・エコノミーの進化
スマートフォンや様々なライフデータデバイスの登場でヘルスケア領域のサービスは2012年ごろから急激に増加を始め、今もその流れは続いています。
そして、現在の4Gから2020年をめどに5G(第五世代移動通信システム)へと移行すると20年に一度の大変化が起きると言われており、その変化は大きく分けると3つあるとされています。
- 高速・大容量化
高画質の大容量コンテンツが高速で配信できるようになることで、今まで体験したことのない視覚・視聴体験ができるようになります。話題になっている8K画像のデジカメ撮影のフォトは、実物か8Kか分からないほどと言われています。 - 低遅延化
リアルタイム性が今までと比べものにならないほど格段に向上します。リアルタイムで行うコラボレーション(多拠点セッション)などがスムーズになります。 - 多接続
同時に多数のIoTとの連動が可能になります。例えば、来店した顧客の実生活における嗜好や購買履歴を照会したり、日常的に利用しているアプリやウェアラブル端末から生体情報を得ることで、顧客に健康的な生活を送るためのアドバイスや提案が、遠隔地からも可能になります。
5Gへの移行によって具現する3つの大きな変化により、ビジネスやライフスタイルまでもが大きく変わっていきます。そして、それらの変化と極めて相性がいいのがヘルスケアやウェルネス領域であり、顧客コミュニティデザインにも大きく影響すると考えられます。
また、遠隔地からでも顧客との深い関係性を築ける環境が整うことで、ヘルスケアやウェルネス領域に参入する事業者が急激に増加していくことが想像されます。
なぜ、コミュニティデザイン&ドライブが必要なのか
9-10月にも解説したBLAでみていきましょう。
Before前行程
顧客経験デザインのフレームでは、接点づくりとして出会いの必然性を重視したコミュニケーションデザインのアプローチが重要です。顧客と製品の間に親和性と自己効力感をスイッチとして、製品との出会いを演出します。
Live使用行程
サービス使用開始時に重要なのは、本人がサービスによってどんな恩恵があるのかをイメージをさせることです。そのサービスを利用し、恩恵を具現化させるためには、初期教育(オンボーディング)技術が有効です。
そしてサービスの恩恵をを享受しているユーザーに、その価値を他の生活と連動させながらさらに継続できるように支援する継続ドライバが、顧客のパフォーマンスと満足度に結びついてくるはずです。
今までのサービスの多くが、顧客接点を持ち、購入された後、予定していたサービスやモノの価値の提供と享受が期間内で満足消費されたら、そこで顧客との関係性が終わるというのが一般的でした。しかし、環境は大きく変わっていきます。
ネットが普及して今注目されているのが、リテンション・マーケティングという、顧客生涯価値を高めるための、丁寧な関係性つくるプロセス技術です。(これは1:5の法則に沿ったものなのですが、意味するところは新規顧客獲得コストが顧客維持コストの5倍かかるというものです。)
顧客との関係性を重視する流れは、ヘルスケアやウェルネス領域のサービス事業だけでなく、様々なビジネス局面からのトレンドでもあることは周知の事実です。
提供サービスの恩恵を享受してくれた生活者と、その後どう関係性をもっていくか?を進めていくコンセプトがコミュニティデザイン&ドライブです。
「どのようなサービスのユーザーか」「どんな志向を持っているか」ある程度理解できているとしたら、その後の提案は可能ではないでしょうか?さらに自社だけでなく他社と業務提携を組んで、ユーザーへ新たな価値提案も可能ではないでしょうか?
例えば、
- 血圧計・体重体組成計を継続利用して記録しているユーザー
- ダイエットサービスで半年で目標を達成した利用者
- 健康食材を定期購入している生活者
- サプリメントの定期購入者
- ヘルスケア&ウェルネスイベント参加者
- 活動力計やデバイス利用者
- 食事記録&健康管理アプリ利用者
- グルメアプリ利用者
など、彼らが好むテーマのコミュニティをデザインして活躍できる仕組みを用意し、自走してもらいながら、新たな提案を投げかけていくという考え方がコミュニティデザイン&ドライブの基本です。
今後のビジネスは、今までの成功体験が通用しない世界だと言われています。自分たちで成功方法を試行錯誤で構築していくしかありません。
IoT時代のヘルスケアサービス事業における顧客経験デザインを開発構築していくための補助線としてBLAフレームを活用してください。きっとゼロベースで開始するより、かなり加速するはずです。
執筆者:株式会社スポルツ 代表取締役 大川 耕平氏
編集人・編集責任者:武坂