ヘルスケアビジネスで成功するマーケティング|新ビジネスの種

2016年9月21日

第5回 ヒト(顧客)をつくるTARGET+ing

買わない人はどんな人?

あなたは誰を相手に商売するのですか。その原点に返ってみましょう。顧客は「ひと」のはずです。

ビジネスは、「ひと」を対象にすることで、「ひと」=《生活者》《消費者》を相手にマーケティング的に介入できます。一方、「病気」を対象とする医学の世界にはマーケティング介入の余地がありません。しかし、「病気」でなく、《患者》を相手にすることでマーケティング介入が許されます。医師も病院も、「病気を治す」から「患者を治す」へ転換することで、いまこれからここに記す話が、適用可能になります。

ひとは、消費行動ないし健康行動の意思決定において、“関心がある/関心がない”のココロで感じるものさしと、“知識がある/知識がない”のアタマで考えるものさしの二つをもっています。となると、顧客は図のような2×2の4つのタイプに分かれることに気づきます。つまり、顧客はワンパターンではないということです。よく私たちは、顧客を二層法で考えてしまいがちです。たとえば、「お店に来て、商品を買ってくれた人と買わなかった人」「サービスを提供して、満足してくれた人と満足しなかった人」という具合に。そして、「買わなかった人にどうしよう?」「満足しなかった人にどう対応しよう?」と悩みます。でも、あなたの顧客は、つぎのような4タイプに分かれるのです。


(1)「関心あり+知識あり」タイプの顧客は、ロイヤルカスタマー(お得意様)の候補者です。その商品やサービスを手にすることでより幸せ感に浸れることをお話ししてあげましょう。

(2)「関心あり+知識なし」タイプは、“買いたいけどよくわからない人”です。だから、買えない。ということは、知識×を○に変えるための《「情報支援」型激励訴求》でアプローチしましょう。

(3)「関心なし+知識あり」タイプは、“わかっているけど買いたくない人”です。だから、買わない。ということは、関心×を○に変えるための《「感情介入」型激励訴求》でアプローチしましょう。

(4)「関心なし+知識なし」タイプには、恐怖訴求ぐらいのことをしないと、なかなかパンチが効きません。


あなたのプロモーションはワンパターンになっていませんか? あなたの商品やサービスが売れなかった理由は、もう明確ですね。

消費者インサイトを探り当てましょう!

マーケティングの世界では、関心軸をインサイトと呼び、「インサイトが強い/弱い」のレンジで示し、知識軸をリテラシーと呼び、「リテラシーが高い/低い」と称します。

インサイトとリテラシーは、インサイト×リテラシーという掛け算の関係にあります。ということは、インサイト(キモチの部分)が0だと、どんな掛け算も答えは0になってしまいます。だから、消費者インサイトを探索する必要に迫られるのです。「消費者インサイト調査」はインサイトの値を1以上に設定するための準備です。

まず、インサイトの構造を理解しましょう。インサイトは、《顕在化しているニーズ》(見えているニーズ)と《潜在化しているアンメットニーズ》(unmet needs: 打消しの接頭語unにmeetの過去分詞metがついてneedsを修飾します。つまり、“出会ったことのないニーズ”)に分解することができます。

執筆者:西根英一(株式会社ヘルスケア・ビジネスナレッジ 代表取締役社長、マッキャン・ワールドグループ 顧問、事業構想大学院大学事業構想研究所 客員教授)
編集人・編集責任者:武坂

西根英一氏

<プロフィール>
マーケティングデザイン開発とコミュニケーションデザイン設計の専門家。商品開発、サービス創造をはじめ、市場戦略、販路開拓、顧客獲得のための“精緻な設計図”を描き、広告プロモーション、戦略PRを最適化する。近著に、『生活者ニーズから発想する健康・美容ビジネス「マーケティングの基本」』(宣伝会議)。 大塚グループ、電通グループを経て、マッキャン・ワールドグループ。大手企業、全国の中小企業のヘルスケアビジネスをマーケティング戦略面からコンサルテーション、地方自治体の地域ヘルスプロモーションを支援する。各種研究機関の役員、委員も務める。大学教員(専門:ヘルスケアマーケティング、若者マーケット)。講演登壇、番組出演、教育研修の機会多数。