私は今朝も、走っている彼女を見かけました。
いつもランニングしているんだから、きっとランニング好きなんだろうな…と、私は勝手に想像しています。
でも、思いました。そもそも彼女が走り始めるきっかけは何なんだろう? なんで彼女は毎日毎日走り続けることができるんだろう? 私は、彼女が何かに突き動かされて「走る」という意思決定した“結果”を、いつも見ているだけなのかもしれません…。
「走る」という運動習慣が健康の維持・増進に大きく寄与、貢献することは、高いレベルの複数の学術研究が認めています。これはれっきとした「正しいもの」ですし、「正しいもの」が、ひとの行動の意思決定の“情報支援”になることは確かです。でもそれって、行動を起こすスイッチのロックを解除したまでのこと。決してスイッチが入った状態ではありません。ひとの行動の意思決定には“情報支援”に加え、もうひとつ、スイッチをオンする“感情介入”が求められます。つまり、「正しいもの」として伝える情報支援でロック解除 +「いいもの」として伝わる感情介入でスイッチオン =「行動しよう」という意思決定!という公式が導き出されます。
この「いいもの」を解釈するのにとても有用な理論を紹介しましょう。マーケティングという学際分野の消費者行動学という学問のなかに、「制御焦点理論」というものがあります。実は、この制御焦点という考え方を理解することで、「いいもの」の構造解析が可能になります。
まずAパターンの「走る彼女」。
- (1) 彼女は、病気とか加齢といったネガティブな結果にいつも敏感な人です。
- (2) なので、彼女は病気とか加齢といった損失を回避するために走っているのです。
次にBパターンの「走る彼女」。
- (1) 彼女は、健康とか美容といったポジィティブな結果にいつも敏感な人です。
- (2) なので、彼女は健康とか美容といった利得に接近するために走っているのです。
私たちは、走っている人たちを一括りにして「走っている人」と単純に見てしまいがちですが、実は走るきっかけも走り続ける理由も根本から異なるAパターン、Bパターンという具合に分類できるのです。Aパターンの損失回避の行動制御を“予防焦点”(prevention focus)、Bパターンの利得接近の行動制御を“促進焦点”(promotion focus)と呼びます。