ときに、私たちはこの響きのよく似た横文字に酔ってしまいがちです。酒の席で語ろうものならなおさらのこと、上等なつまみになって、ますます酔いが回ります。酔えば酔うほどに、さらに「夢」を語り始めます。
でも、ビジョンって単なる「夢物語」でなく、「ちゃんと見えるもの」でなくてはなりません。だからこそ、visionary business(先を見据えたビジネス)みたいな言葉があります。
もうひとつの「ミッション」。口にするとカッコいい言葉です。が、これもこれで厄介です。語感がきれいなのに、意味を解せない。難語中の難語です。私が勝手にお友達と思い込んでいる岩田松雄さん(元・スターバックスコーヒージャパンCEO)が書いた『ミッション』という本が大ヒットしました。きっと言葉がもつ響きの良さと難解さの、その乖離したスキ間を埋めたい人が世の中にとても多かったのでしょう。
健康や美容をテーマにするヘルスケアビジネスにおいても、このビジョンとミッションは大切です。
私は、この精神世界を浮遊しているかのような「ビジョン」と「ミッション」という言葉、特にヘルスケアビジネスでは好んで語られることの多いこの言葉について、ビジネスの世界では「KGI」(Key Goal Indicator)と「KPI」(Key Performance Indicators)に、アカデミアの世界では「目的変数」と「説明変数」に置き換えられるとみています。
たとえば、アカデミアの世界の話。求め出したい“健康度”を目的変数と設定すれば、そのために“身体的健康”(physical health)、“精神的健康”(mental health)、“社会的健康”(social health)等を計測するという行為のもとに、複数の説明変数の算出が必要になります。
たとえば、ビジネスの世界の話。“この薬剤の登場をもってして〇〇治療が確立したと言える”を崇高なるKGIと設定した場合、その薬剤の有効性や安全性から成る“評価”、期待値や満足度から成る“評判”、さらに社会性や倫理性などに照らして、薬剤認知度、処方率や売上げ、治療満足度等、数値目標なる複数のKPIを目標に据えます。これらKPIの総合計によって、ひとつのKGIが達成されるというわけです。
つまり、私たちが提供するヘルスケアビジネスをもって、“〇〇したいビジョン”に到達するために、“〇〇すべきミッション”があるという解釈ができます。