「三種の神器」を正しく理解するには、“トリプル・メディア”を理解するとよいでしょう。 つい最近まで、メディアといえば「マスメディア」を指し、新聞・雑誌、テレビ・ラジオという時代がありました。これらの広告スペースをマスメディアから引き受け、マスメディアに代わって企業に売る広告代理業が、長いこと幅を利かせる時代でした。しかし残念ながら、これらマスメディアの情報発信の価値は下降し続け、いまや下げ止まりまで達した感じです。
一方、それらに代わって台頭した「デジタルメディア」では、何の精査も検閲も校閲もないままに情報が自由に発信され続ける事態を招き、つい最近、医療情報を扱っていたデジタルコミュニケーション企業のトップが頭を下げるような事件がありました。検閲の代わりに、そこにあったのは、著作権侵害を回避するための原稿作成時のガイドラインでした。 さて、ヘルスケアの情報発信にあたり、いま私たちに求められるものは何でしょう。
- 1) 「オウンド・メディア/Owned Media」(自ら所有し、評価等を担保するメディア)を用いて、学術情報(商材の有効性・安全性・簡便性・経済性に係るエビデンス)を発信する。
- 2) 「アーンド・メディア/Earned Media」(第三者が取り上げ、評判等を獲得するメディア)を用いて、PR素材(商材の共感性・安心感・事前期待値・事後満足度につながる話題)を発信する。
- 3) 「ペイド・メディア/Paid Media」(消費者に働きかけるために、広告枠の費用を負担するメディア)を用いて、プロモーション素材(意思決定・消費行動を支援するメッセージ)を発信する。
といった“トリプル・メディア”をもって「三種の神器」として機能させていくことが求められます。大切なのは、そのバランスを保つことです。大きな企業は、学術部が学術情報を、広報部がPR素材を、宣伝部がプロモーション素材を担当し、その役割を分担し、責任を徹底しています。小さい企業であるなら、これらのバランスを保つ役割責任をもつコミュニケーション担当者を置くとよいでしょう。
執筆者:西根英一(株式会社ヘルスケア・ビジネスナレッジ 代表取締役社長、マッキャン・ワールドグループ 顧問、事業構想大学院大学事業構想研究所 客員教授)
編集人・編集責任者:武坂