ヘルスケアビジネスで成功するマーケティング|新ビジネスの種

2017年3月15日

第11回 これからのヘルスケアビジネスをどうするか?

最も伸長するビジネスがヘルスケアビジネス

今回が最終回です。私、この11カ月の間にいろいろとありました。勤め人を辞めました。いま二つの会社の代表取締役です。一つが、健康・医療・美容のマーケティング設計とコミュニケーション設計を提供する株式会社ヘルスケア・ビジネスナレッジ、もう一つが3月3日に登記したばかりの株式会社デザインサプリです。教員業が板についてきました。いま、事業構想大学院大学で社会人に、千葉商科大学で大学生にヘルスケアを教えています。春からは琉球大学大学院でも観光×ヘルスケアの教鞭をとります。

私個人にこんなにも大きな変化があるのも、きっとヘルスケアビジネスの「急成長」のせいです。それくらいヘルスケアは、“急いで”います。

厚生労働省の管轄下にあったヘルスケアは、いまや経済産業省の中核をなす推進事業です。文部科学省も、内閣府も、消費者庁も、中小企業庁も、スポーツ庁も、「ヘルスケア」という言葉を普通に使っています。ちょっと前まで、ヘルスケアと聞くと、クスリ臭い雰囲気が漂いました。それにビジネスという言葉がついたヘルスケアビジネスなんて口にするものなら、他人の健康で金稼ぐのか!くらいの言われ方をされる時代があってもいいはずですが、実際にはそんなタイミングすらなく、「ヘルスケアビジネスの時代」になりました。 そしていま、各省庁は企業だけでなく、自治体へ向け、「地域ヘルスケアビジネスの時代」を推進しています(図)。

これからのヘルスケアビジネスをどうするか?

技術が先行してきたヘルスケアですが、これからは生活が先導するヘルスケアにならねばなりません。健康に関する数値を正確に測る技術はできました。これからは、その数値データを測って何するのか?が問われます。社会に貢献する数値、地域に貢献する数値、職域に貢献する数値、家族に貢献する数値、個人に貢献する数値。こんなところに、ビジネス拡大のバッファがあるように感じます。

大阪市の企業支援で携わった企業のひとつに、生活に合わせて自動的に最適化された献立を推奨するというシステムとサービスを考えた会社があります。株式会社スタイルクリエイツ(大阪市中央区、代表取締役社長:中井康之氏)といいます。

学校給食の「献立表」から家庭の「今日の献立」を提案するサービスです。大阪市内の公立小学校を対象に 2月1日から開始しています(https://9-navi.com/)。 ここで重要なのは、何かを解決している!ということです。「測る」(測定する)だけ、「集める」(集積する)だけ、そして「計る」(計算する)だけでなく、「分析する」+「解析する」をし、「課題解決」のための「戦略策定」をサービス化している点が評価されます。

多くのヘルスケアサービスが、製品開発にとどまっています。これからは、生活価値をもった商品開発をする覚悟を持ってビジネスに当たらねばなりません(図)。

自分の商材の価値を伝えるだけでなく、生活者に価値が伝わるようにするためのアプローチが「マーケティング」です。もし、それが気になりましたら、このシリーズの一回目から読み直してみてください。愛読者の皆様、お世話になりました。生活者にとって、ゆめのある、しあわせの、きっかけとなるヘルスケアビジネスを心掛けてください。

執筆者:西根英一(株式会社ヘルスケア・ビジネスナレッジ 代表取締役社長、マッキャン・ワールドグループ 顧問、事業構想大学院大学事業構想研究所 客員教授)
編集人・編集責任者:武坂

西根英一氏

<プロフィール>
マーケティングデザイン開発とコミュニケーションデザイン設計の専門家。商品開発、サービス創造をはじめ、市場戦略、販路開拓、顧客獲得のための“精緻な設計図”を描き、広告プロモーション、戦略PRを最適化する。近著に、『生活者ニーズから発想する健康・美容ビジネス「マーケティングの基本」』(宣伝会議)。 大塚グループ、電通グループを経て、マッキャン・ワールドグループ。大手企業、全国の中小企業のヘルスケアビジネスをマーケティング戦略面からコンサルテーション、地方自治体の地域ヘルスプロモーションを支援する。各種研究機関の役員、委員も務める。大学教員(専門:ヘルスケアマーケティング、若者マーケット)。講演登壇、番組出演、教育研修の機会多数。