ルールに関しては細かいものまで挙げていくとかなりの数になるのですが、ここでは私が重要と考える2つに絞って書きたいと思います。
・意思決定の簡素化と権限委譲
A社の場合、意思決定は担当役員さんに相談に行くだけで、原則その場で意思決定が出ます(大きな金額の投資以外)。かつその役員さんとは基本的に毎日顔を合わせるので、必要な時には随時意思決定ができます。
一方で、B社は、意思決定は担当役員ではなく原則として役員会を通さなければならないとのことでした。役員会は通常月1回しか実施されませんので、意思決定はどうしても遅れ気味になります。
社内の新規事業であれベンチャー立ち上げであれ、勝ち抜くためにはスピードが非常に重要です。この意思決定のスピードだけで、A社さんとB社さんのどちらが成功確率が高いかは明らかです。
また、意思決定の迅速さとも関連しますが、どこまで権限を委譲するかについても重要な要因です。既存ビジネスとは異なる基準を作り、できるだけ現場で意思決定ができるように権限移譲を進めることが重要です。
意思決定の簡素化と権限委譲を考えると、新規事業を一部門ではなく分社化して進めるという方法があります。
様々な調整は必要ですが、分社化をすることで意思決定や権限移譲について新しい仕組を作ることが可能になりますし、メンバーに気合いが伝わるという意味で十分に検討に値するでしょう。
・撤退基準の設定
「スタートする前から撤退基準を決めておくの?」と思われるかもしれませんが、新規事業を始めるにあたって撤退基準を明確にしておくことは極めて重要です。
新規事業は想定通りに進まないのが常です。しかし、一旦スタートすると組織行動上ストップするという意思決定がなかなかできないというのが現実です。その結果、将来性が低いビジネスだとわかっていてもズルズルと継続してしまい、結果として多額の資金を失ってしまうことになります。
このような事態を避けるため、例えば「3年以内に月次損益黒字化」という簡単なルールや、A社のように期限と売上規模の目標を作り、それを撤退基準とします。
撤退基準を明確化する目的はズルズルと将来性のない事業を続けないようにすることです。従って、撤退基準を越えられなければいかなる場合でも撤退する、というように杓子定規に考える必要は必ずしもありません。
しかし、撤退基準を越えられないということは当初の想定と違う現実に直面しているということを意味します。その事実を受け止めて、ルール通り撤退するか、それでも継続するかの意思決定を冷静に行うことが必要です。そのタイミングを持つことは過度な資金流出を抑止する効果に繋がります。
人事制度やチームについても重要なルールがあるのですが、この点は次号にて詳しく考察したいと思います。