このポイントをかみ砕いて表現すれば、チームのメンバーが
「その事業についてどの程度熱意を持っているか」
「その事業を大きく成功させたいと思っているか」
「そのためにリスクを取る覚悟ができているか」
ということです。
ベンチャーを立ち上げる場合ならば、起業家自らが考えたアイデアを基に会社を立ち上げることになりますので熱意やリスクを取る覚悟については当然ながら持ち合わせています。
ところが新規事業の場合は必ずしもこのポイントがクリアされているとは限りません。
自ら志願したわけではなく会社からの指示で新規事業担当者になった場合、「なぜ突然興味がない仕事に関わらないといけないんだ」という不満や、「自分は出世のラインから外れてしまった」という誤解を持たれることが多々あります。結果として熱意が低くチームとして機能しません。
また、「万が一失敗して自分の評価が下がるようなことがあると割に合わない」という不安を持たせてしまうことも多くあります。
このような不要な不満や不安を持たせないためには次の二つの対策が有効です。
1.担当者候補全員に全社戦略における新規事業の重要性を説明し、その目的を腹落ちさせる。
2.取り組む新規事業プランの発案者をチームに加えることで、チーム内に熱意を持たせる。
新規事業プランを考えた本人はそのアイデアについて面白味を強く感じていることが多く、熱意という点においては社内で最も高く持っています。この発案者をチーム内に加えることによってチーム内の熱意を高い水準に維持することが可能となります。
また「その事業を大きく成功させたいと思っているか」という志の点においても発案者が他のメンバーに直接説明することができるため、大きなプラス効果が見込まれます。全社的な意味でその重要性や目的を理解したメンバーに対しては、発案者がメンバーに加わることによってモチベーションを高めることができるようになります。
一方、「そのためにリスクを取る覚悟ができているか」というリスク許容度に関しては社内での新規事業開発において最も困難が伴います。
乱暴な言い方をすると、「新規事業のリスクについては全て自分が責任を負う」というくらい覚悟を持つ社員は存在しません。それくらいの覚悟があるのであれば自ら起業している場合が多いからです。
社内における新規事業の場合、万が一失敗したケースでもある程度新規事業担当者のリスクを回避できるような社内制度を構築する必要があります。
例えば、新規事業担当者については、単純に新規事業の成否だけで評価されるのではなく、そのチャレンジに対する取り組みや、新規事業から学んだことについての社内へのフィードバック効果を含めて評価制度を設ける等の対策が必要になります。ここの対応が十分ではないと「新規事業を担当すると人事評価上、損になる」という雰囲気が社内に芽生え、新規事業が育たない社風になってしまいます。