2012年4月18日
これだけは覚えておきたいシニアマーケット基礎数字(1)要介護
~介護が必要な人1割強、介護費用は要介護者か配偶者の年金・恩給から捻出~
高齢者とひとくくりにいっても、若年層や中年層と比較すると、健康状態・介護状態・世帯の状態等による健康・介護ニーズの個人差は大きい。
今月は、要介護者に焦点をあてて、年代別要支援・要介護者数、介護度別介護内容など基礎データからターゲットとなる高齢者イメージを明確にする。
・厚生労働省「平成22年国民生活基礎調査」
調査対象:5,510単位区内の世帯約29万世帯及び世帯員約75万人
調査方法:調査員による配布・回収
調査期間:平成22年6~7月
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1.シニアのうち要介護者は約12%
65歳以上の人口のうち、要介護認定を受けている人は約16%(要支援:約4%、要介護:約12%)であり、認定を受けいない自立した人は約84%である。また、75歳以上になると、要介護認定を受けている人は約29%(要支援:約7%、要介護:約22%)と増加する。
(参考)要介護認定の目安
注)実際には、個々の身体状況・生活状況等をふまえて、各自治体が判定するため、上記はあくまで目安
出所)公表資料をもとに三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成
表1 要介護者等の割合
- 【65歳以上人口に占める割合】
- 【75歳以上人口に占める割合】
出所)厚生労働省「平成21年度 介護保険事業状況報告」、
総務省 統計局「人口推計月報(平成22年4月)」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成
図表2 要介護者等の割合(年代別)
注)上記は介護を要する者数10万対
出所)厚生労働省「平成22年度 国民生活基礎調査」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成
なお、各年代における要介護度別構成をみると、概ね、年代が高くなるにつれて要介護度が高い人が少なくなっている。これは、若年の方が脳血管疾患(脳卒中)等が原因で高い要介護状態となるケースが比較的多い一方、高齢になると加齢に伴う衰弱や関節疾患等が原因で要支援等となるケースが比較的多いことによる。
また、性別では、女性より男性のほうが介護度が高い傾向にある。
図表2 年齢別、性別の要介護度
出所)厚生労働省「平成22年国民生活基礎調査」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成
2.要介護度が上がるにつれ、生活支援に加えて身体・精神的なケアも
要介護度別に介護内容をみてみると、要支援から要介護2までは、主に「食事の準備・後始末」、「掃除」、「買い物」、「洗濯」などの日常生活のケアを受けている。要介護3以上になると、それに加えて「着替え」、「入浴介助」、「排泄介助」、「身体の清拭」、「洗髪」など大掛かりな身体介助を受けており、さらに要介護4以上では「洗顔」、「口腔清掃」など小さな動作についても介助を必要としている。また要介護3以上では、「服薬の手助け」、「話し相手」など、精神面のケアが高くなっていることも特徴である。
図表3 要介護度別介護内容
出所)厚生労働省「平成22年国民生活基礎調査」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成
3.主な介護者は「配偶者」「子」「子の配偶者」で6割以上、「事業者」は約1割
介護を行なっているのは、配偶者がもっとも高く25.7%、次いで同居の子20.9%、同居の子の配偶者15.2%と、同居の家族が6割以上を占めており、事業者は13.3%にとどまっている。
一方、介護者の年齢は、50歳未満が約1割である一方、60歳以上が6割以上を占めており、80歳以上も12.3%あるなど、高齢化傾向にある。
図表4 主な介護者の構成
- 【要介護者等との続柄別にみた主な介護者】
- 【同居の主な介護者の年代構成】
出所)厚生労働省「平成22年国民生活基礎調査」
4.介護費用は、要介護者自身と配偶者の年金・恩給が主
要介護者等の世話は同居の子ども夫婦が行なっているケースも多いが、介護費用については、あらゆる年代で「要介護者か配偶者の収入(年金・恩給)」を充てているケースがほとんとで、70~76%を占めている。なお、65~69歳で「要介護者か配偶者のその他の収入」、90歳以上で「要介護者や配偶者以外の収入や貯蓄」が他年代と比較して若干高い傾向にある。
図表5 年齢別介護費用負担の状況
注)調査元の選択肢「介護費用は介護を要する者(あるいは配偶者)の収入(年金・恩給の収入)を充てた」、「介護費用は介護を要する者(あるいは配偶者)の収入(その他の収入)を充てた」、「介護費用は介護を要する者(あるいは配偶者)の貯蓄を充てた」、「介護費用は介護を要する者(あるいは配偶者)以外の者の収入・貯蓄を充てた」を三菱UFJリサーチ&コンサルティングが加工
出所)厚生労働省「平成22年国民生活基礎調査」より三菱UFJリサーチ&コンサルティング作成
まとめ
- 要介護者等について基礎的なデータを整理したが、介護に馴染みがない方にとっては、意外な数字があったかもしれない。例えば、要介護者と要支援者を合わせても全体の1割強に過ぎず大半は比較的元気な高齢者である。また、加齢に伴って介護度が高い人の割合が多くなるのではなく、かえって要支援など比較的介護度の低い人の割合が高くなる(もちろん、各年代の人口全体に占める要介護者等の割合(発生率)は年代が上がるとともに増加する)。
- 介護費用は、要介護者自身と配偶者の年金・恩給が主な財源となっているが、意思決定をする人と同じとは限らない。要介護者等が高齢になるほど、その子が介護や生活全般のことを決めている可能性が高い。
- なお、要介護者へのサービス提供は介護保険が柱になっているのは言うまでも無いが、要介護者や介護者の中には「介護保険で受けられるサービスの量が不足している」「介護保険以外のサービスを受けたい」といったニーズもあり、介護保険の枠外にもビジネスチャンスが存在する。
- 介護者の悩みとしては、精神的負担や肉体的負担等が挙げられる。中でも、見守りに要する時間的負担(家を留守にできない、自分の時間が無い、眠れない)は大きい。重症者にはモニタリングだけではなく至急の対応(転倒時の起き上がり補助等)も必要となる。また、服薬は健康状態を大きく左右する重要な行為であるが、決まった量を決まった時間帯にきちんと飲み込んでもらう負担は大きい。在宅の介護者や施設の介護職員に向けたビジネスもまだまだ需要があると考えられる。
編集人:井村 編集責任者:瀬川
編集協力:三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社