- たしかにプラス株式会社2016年認定
- 機能性表示食品を活性化し、日本文化として発信したい。
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2015年から消費者庁が実施する機能性表示食品制度。中小企業にも配慮して設計されたこの新制度の活用を支援する事業が2016年にトップランナー認定を受ける。伴走者であるコーディネータと駆け抜けた2年間を振り返る。
プロジェクトを成功させるのは目標への壁を越えていく本気度。
(深谷)これまで、食品に機能を表示するための制度としては特定保健用食品などがありましたが、その認定を得るためには臨床試験が必要で何千万円という費用がかかります。このために利用できるのは、ほぼ大手企業に限られていました。そこで中小企業でも食品に機能表示ができるよう、臨床試験だけでなく過去の論文レヴューでも科学的根拠として認められるよう制度を緩和したのが機能性表示食品制度なんです。
弊社では、私のこれまでの医薬品開発の経験や、医療機関専門のホームページを制作してきた知識をもとにして、この機能性表示食品の開発や申請を支援するプロジェクトを開始し、これが大阪トップランナー育成事業で認定されたわけです。
(清水)私は、認定プロジェクトをサポートするハンズオン支援により、たしかにプラスさんのコーディネータを担当することになりました。最初に意識しているのは、とにかく数字よりも人柄を見るということ。プロジェクトが成功するかどうかというのは、最終的に経営者の本気度にかかっています。経営資源が豊富でなければ壁を乗り越えていくために相当な熱意が必要になりますから。本気の度合いを確かめるため、まずは本音を語り合いたい。そのための信頼関係を築くことから始めましたね。
事業としての強みと課題を共有し、その解決策を着実に実行。
(深谷)お互いのフィーリングが近かったというか、すぐに友人のようになれましたね。経営者にとって身近に相談できる人というのは、なかなか得難いんです。社員にも相談できない経営上の悩みや課題、銀行や税理士にしか見せたことのない営業の数字。これらを信頼してさらけだせるコーディネータに出会えたことは本当に幸運でした。
(清水)そもそもプロジェクトとしては、たしかにプラスさんの場合、医療関係とのネットワークなど、すでに充分な強みがありました。つまり“お客様から選ばれる理由”があるわけです。なので、必要なのはまず知ってもらうこと、知名度をあげることでした。そこで展示会への出展や業界紙への広告などを勧めました。
(深谷)展示会に出展するにあたっては、すぐに専門家を紹介してくれました。このとき驚いたのは、効果的な展示方法はもちろんですが、会場でお客様から聞いた意見や要望をすぐにスタッフと共有するためのデータ管理や、名刺交換だけに終わらないためのアフターフォローなども教わったことです。まさにプロの仕事としてすごく勉強になりましたね。
地道な認知拡大の努力を通じて、大きな飛躍のチャンスと出会う。
(清水)少しでも交流を広げるために知っている食品会社を紹介して一緒に営業に行ったりもしましたね。あとは、たしかにプラスさんがお客様に対してなにができるのか、どんな未来を提案できるのか理解してもらうための営業ツールの整備です。さらに認知拡大のため、トップランナー育成事業主催の食品業界向けセミナーに講師として登壇してもらいました。
(深谷)あのセミナーが、このプロジェクトにとって、まさにプレークスルーになりましたね。たまたま参加しておられたチョーヤ梅酒株式会社さんと出会い、機能性表示食品としての「酔わないウメッシュ」開発がスタートしたんです。
お客様のこだわりに寄り添いつつ、新市場向け「ウメッシュ」開発を支援
(清水)「酔わないウメッシュ」の仕事は長期化しましたね。結局、私の支援期間中には製品化まで達成できなかった。
(深谷)今回の機能性関与成分であるクエン酸は、これまですでに15件受理されており、清涼飲料水としても12件目になります。しかし、これらはレモン由来から食品添加物の合成クエン酸であり、梅由来のクエン酸を機能性関与成分としてものでは初の届出食品でした。チョーヤ梅酒株式会社さんは梅食品におけるリーディングカンパニーとして商品に使用する梅にこだわりを持っておられるため、合成クエン酸を使わず天然の完熟南高梅を使用して商品開発を行ったわけです。このため、届出受理までには数多くの障壁を乗り越えなければなりませんでした。
(清水)そうしてプロジェクトが進むうちに新たな課題も見えてきましたよね。契約に必要な契約書作成とかは専門の弁護士を紹介するなど得意分野でしたが、一件当たりの業務がこれほど長期化するとは予想外でした。人材確保とか資金調達、清算方法など、成功までの事業計画をこまめに相談していきました。
(深谷)苦労はありましたが「酔わないウメッシュ」開発のおかげで、プロジェクトは一気に軌道に乗りました。世間で話題になるといろいろと引き合いが来ますし、他の大手企業からも相談を受けるようになりました。
(清水)“看板”になる商品ができたおかげで、最初に課題だと思っていた認知度の部分が大きく解消されたわけですね。
中小企業支援という目標を大切に、日本の健康文化を世界へ発信したい。
(深谷)けれど、当初の目的である“中小企業の支援”という意味ではまだまだ物足りないと思っています。そこでいま進めているのが、臨床試験のコストダウン。まったく新しい原料がでてきたときには、やはり臨床試験が必要になりますから。じつは臨床試験中って定期的に血液検査などを行い、医師からの健康アドバイスがもらえるので、自然と健康意識が高まっていくんです。これを生活者にアピールすることで、もっとも費用の掛かる被験者集めをスムーズにできないかと。
(清水)わたしも臨床試験に3か月ほど参加したのですが定期的に診断を受けることで1年間に13kgも減量できました。
(深谷)試験参加者にとっても大きなメリットを提示できるわけです。あと、機能性表示食品を集めて、医師の客観的な評価をつけて販売するECサイトもゆくゆくは運営したい。単なる商品開発だけでなく、その販売まで一貫して支援できるような体制を整えたいんです。そして美味しいものを食べながら健康になるという習慣を、日本の文化として世界中に発信していきたい。
(清水)深谷社長は本当にビジョンやアイデアを持っている人ですし、さらに行動力もある。これから医療や健康の世界を変えていく方だと思っているし、コーディネータとして伴走の甲斐があるプロジェクトでした。
<課題点>
Issue.1
医療業界では強いネットワークを築いているものの、食品業界では知名度、認知度が高くない。
Issue.2
なにをしてくれる企業なのか、コラボレーションすることでどんな未来が開けるのかを、もっと周知させることが必要だと判断。
<ハンズオン支援の内容>
- 展示会への出展
- 専門家の紹介・出展費用一部負担
- 業界新聞への広告出稿
- トップランナー育成事業主催のセミナーに講師として参加
- 食品企業に同行訪問
- 会社案内などの営業ツールを整備
<結 果>
同じく認定プロジェクト実施企業であるチョーヤ梅酒株式会社と出会い、スポーツ市場をターゲットに、梅由来のクエン酸による「運動後の疲労感を軽減」することを表示した「酔わないウメッシュ」の商品開発を支援。この商品化に携わった実績が自社の“看板”となり、認知度向上につながった。