2015年3月9日
80人以下特養、経営厳しく 在宅復帰強化老健、収支改善
独立行政法人福祉医療機構(東京都港区)は特養と老健の経営状況に関する調査結果を取りまとめた。いずれも2013年度の経営状況を調査したもの。特養では、定員79人以下の施設では3割が赤字であること、老健では赤字施設の割合が年々増加していることなどが明らかになった。
小規模な特養は人員配置非効率
特養は1869件を調査。このうち、赤字経営となっているのは全体の26・3%。規模別では、規模が小さくなるほど赤字の割合が多い。定員100人以上の施設では赤字割合は16・3%だが、49人以下では34・2%と倍以上となっている。
入所者10人当たりの従事者数を見てみると、定員100人以上の施設では6・5人なのに対し、定員49人以下では8・3人となっており、大規模施設ほど従事者1人当たりの収益は高くなる。福祉医療機構では「定員規模が大きいと効率的な人員配置で収支にも余裕が出るため、人件費も手厚く、厚遇できているのではないかと考えられる」と分析。特養の収益性の分岐点として「定員80人」を一つの目安として掲げている。
加えて、開設経過年数が長くなるほど、事業収支が悪化する傾向がみられる。新しい施設は、収益性の高い個室ユニット型が多いことや、勤務年数の長い職員が少なく、人件費が低いことなどが理由として考えられる。
老健は1400件を調査。全体の中で赤字施設が占める割合は15・4%で2012年度調査に比べ2・0ポイント増加。2009年度の8・9%からは1・5倍以上に増加している。赤字の施設と黒字の施設を比較すると、利用者100人当たりの従事者数は、赤字施設が63・2人、黒字施設が58・8人と大きな差がある。一方、入所定員1人当たりの建築面積は、赤字施設が45・8平米なのに対し黒字施設は43・9平米となっており、赤字施設は非効率な運営を行っていることがわかる。
在宅強化型老健が全体に占める割合は8・1%で、2012年度より2・4ポイント増加した。
在宅強化型老健の経常収支率は平均7・2%で、従来型老健の平均7・3%を下回った。ただし、2012年度は強化型が7・1%、従来型が8・6%であり、その差は少なくなっている。
これについて、福祉医療機構では「強化型が創設されて2年目となり、人件費を含めた先行投資的な部分が徐々に解消されたこと」などを収支改善の理由として掲げている。
*本記事は、2015年3月4日発行の高齢者住宅新聞より転載しています。