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稼働率や外気温のデータをもとにAIで空調全体を最適化

PROJECT
革新的空調自動制御システム「Smart Management」
COMPANY
株式会社未来のコト

稼働率や外気温のデータをもとにAIで空調全体を最適化

設備稼働率や気象データをもとにAIが空調設備をコントロール。世界でも類を見ない独自の制御技術がカーボンニュートラル社会の実現を加速する。

気象データと連動する空調制御を実現

― 認定プロジェクト「smart management」の開発経緯をお教えください。
中農 10年ほど空調の省エネルギーシステムに携わってから6年前に創業したのですが、当初はエアコン制御のみを考えていました。しかし2020年施行の「改正健康増進法」を機に換気制御にも注目。この法律では施設・店舗におけるCO2の室内濃度基準を1,000ppm以下にするよう求められていますが、室内温度をいくら調えても外気と換気してしまうと意味がない。
そこで時間や曜日によって変化する稼働率に応じて換気タイミングを最適化し、エアコンによる冷暖房を効率化するシステムをまず開発しました。

― そこからさらに発展させたというわけですか。
中農 ええ。着目したのは外気温です。商業施設は閉鎖空間が多いので、気候の穏やかな季節でもエアコンが稼働している。そこで外気温を測定して空調制御に活かそうと考えたわけです。ところが建物周囲を温度計で計測しても、測定範囲が指先ほどなので全体の外気温がわからない。そこで気象庁のデータを活かせないかと調べたんですが、日本全国で測定箇所は1,500ヶ所しかなく、これだと距離40kmぐらいのメッシュになって利用は難しい。
ところが民間のウェザーニュースに問い合わせたところ全国13,000ヶ所、メッシュで結ぶと1km単位の測定データが得られるとわかりました。しかも予測精度が90%以上。このデータをクラウドで活用して、施設の稼働率や外気温をもとにAIがエアコンと換気を制御する「smart management」を完成させることができました。

モーター回転数を制御する独自技術

― システム開発で苦労した点はありますか。
中農 エアコンの電力というのは90%以上を熱交換器、つまりモーターで駆動するコンプレッサーが消費しており、電力削減にはモーターの回転数を制御することが不可欠なんです。しかし国内だけでもダイキン・日立・三菱・東芝と多くのメーカーがあり、機種ごとにも制御用の信号フォーマットがばらばらです。
すでに3,000種ほどの信号フォーマットに対応させてきましたが、これからも新機種が出るたびに対応していかなくてはならない。開発者として「走り続けること」がもっとも苦労する点と言えるでしょうか。

― では「smart management」の優位点を教えてください。
中農 このモーター回転数を細かく制御していることです。じつは他の省エネシステムはたんに空調機器をオンオフしているだけで製品寿命に影響するため、設置するとメーカー保証が切れてしまいます。海外のシステムもおなじですね。
しかし特許取得もしている当社技術は機器への負荷が小さくメーカー認証も受けているので、10~15年の長期にわたる保守点検サービスを継続できます。これは大きなアドバンテージですね。

環境貢献が価値を向上させる時代へ

― 具体的にどれぐらいの導入効果が期待できるのでしょう。
中農 施設の規模や環境にもよるので、なかなか一概には言えないのが難しいところです。目標としては15~30%の削減効果をめざしています。けれど実際に導入された例では10%程度のところもありますし、逆に50%もの効果を発揮した施設もあります。

― 電力費が高騰しているなか効果としては大きいですね。
中農 さらに今後、省エネルギーというのは経費削減の側面ばかりでなく施設や店舗の集客面にも大きく影響してくると思います。すでにヨーロッパなどは商業施設を利用するにあたって「環境問題に貢献しているかどうか」が選択の条件としてあがってくる時代です。製造現場などでも、省エネ努力が取引関係に大きく影響してくるでしょうね。
日本政府も2050年までにカーボンニュートラルを実現する目標を掲げており、先日も今後10年間で20兆円を投資するという計画を発表しました。省エネ市場というのはますます大きく動いていくと思っています。

TURNING POINT

世界も視野に入れた広い市場展開

― 施設や店舗以外では、どのような分野での展開を考えておられますか。
中農 ユニークなのは農業ですかね。室内栽培や水耕栽培などは空調管理が重要なんです。さらに日照時間の管理も必要なので気象データと連動して遮光カーテンの開閉などをあわせて管理できればと思っています。あとは製造工場。施設稼働率をもとにした制御技術を活かして実働しているベルトコンベアラインに応じて空調を制御し、換気装置ともいえる粉塵回収装置などもあわせて制御するとかです。
このほか太陽光発電がすでに稼働している早朝の電力を利用して日中の電力消費を平準化したり、計測したデータを換算して現場でのCO2排出量を見える化したりと「smart management」の得意技術を応用できる分野がまだまだあると思っています。

― 今後、ビジネスとしての広がりはありますか。
中農 これまでは既存設備への追加が基本でしたが、最初から「smart management」を導入してもらうことを考えています。省エネのコンサルティング企業にOEMして設備設計の段階から採用してもらう方法ですが、これは具体的に動き出しています。あとは海外展開ですね。先に話したようにモーターの回転制御による省エネルギー化という技術は海外にもありませんから勝機があるのではないかと。
そこで市場調査としてアメリカでの展示会に出展しようと計画しています。これには大阪トップランナー認定プロジェクトへの支援も活用して、JETRO(日本貿易振興機構)に相談しているところです。

希望するマッチング&パートナー例

  • 電気料金を抑えたい商業施設や工場
  • 全国展開し複数の店舗がある企業
  • 「RE100」「Jークレジット制度」に対応している企業

企業DATA

企業向け空調設備の省エネルギーシステムの企画・開発・提案・販売

株式会社未来のコト
代表取締役 中農 竜二