制作現場を支える人材をグローバルに創出し、日本のアニメ業界を持続可能に。
成長を続ける一方で、深刻な人材不足を抱える日本のアニメ業界。現場起点での教育コンテンツを提供することで、日本のアニメ業界を下支えする人材をグローバルに輩出する。
日本のアニメ業界の人材不足が深刻化。
― 認定プロジェクトについて教えてください。
大谷 アニメーター育成オンライン講義システムは、国内のクリエイターの卵や海外のクリエイターに向けたサービスです。業界の最前線で活躍する現役クリエイターから、アニメ現場で必要な知識や基本的な技術を学ぶことができます。弊社はWebシステムやスマートフォン向けのアプリ開発を手がけており、このプロジェクトは新規事業として立ち上げました。
― どういうきっかけで、この新規事業がスタートしたのですか。
大谷 弊社に「アニメスタジオを作らないか」という打診があったことがきっかけです。ひとまず業界について勉強してみると、想像以上にいろんな課題が見えてきました。その一つが深刻な人材不足です。日本のアニメ業界は国内外で成長を続けていますが、世界的なニーズの高まりから制作案件が増加しており、納期が短期化され、求められるクオリティも高くなっています。そうしたニーズに対して現場への人材供給が全く追いついていない。そこで、将来的な人材不足に対する課題解決のチャンスを作るようなサービスを始めたいと思ったんです。私自身、マンガやアニメが好きでしたし、弊社の得意分野であるシステムを掛け合わせれば事業化できると考えました。
専門家のノウハウ、情報コンテンツを豊富に提供。
― 国内だけでなく、グローバルでも展開するんですね。
大谷 日本国内には大学や専門学校などアニメ制作の学習の機会がありますが、海外には多くありません。本物を学ぶ機会が少ない分、海外のクリエイターたちは本物を学びたいという熱量が高いように思います。また、ほとんどが我流で学んでいるためどうしても技術や手法が合っているのか、本人たちも不安に思っています。現場起点での教育コンテンツを通じて、学習機会を増やし、彼らに現場で活躍できる素養を提供できれば、遠回りかもしれませんがアニメ業界に貢献できるのではないかと考えています。
― ターゲットとしている国はありますか。
大谷 現在既に、韓国や中国、一部の東南アジア含め世界でも、多くのアニメーターたちが日本のアニメ制作現場で活躍しています。私たちはそれ以外の、まずは中東や東ヨーロッパ、インドなどでサービスを提供していく予定です。今年の8月にテスト運用を開始し、2025年には本格始動したいと考えています。
制作現場で必要な考え方や核を学ぶ場に。
― オンライン講義システムにはどのような特色がありますか。
大谷 私たちの考えや思いに賛同いただいたアニメーターや演出家、法律家の方々にご協力いただき、専門家のノウハウやスキルが学べるようになっています。実績のある講師からデッサンや絵コンテの描き方、考え方が学べることは、特に海外の人にとって大変貴重な学習機会になるはずです。さらに、私たちは情報コンテンツの面も重視しています。例えば、現役で活躍されている方々に「どういう経緯でアニメーターになったのか」、「どんな思考の子どもだったのか、それが今のこの仕事にどう生きているのか」というようなことをインタビューしています。そういった考え方やクリエイターの核になるような情報こそがアニメ業界で働く素養になりますし、アニメーターの地位向上につながると思っています。
― プロジェクトを進める上で苦労した点はありますか。
大谷 クリエイターの方々がとにかく忙しく、講師の確保に苦労しました。アニメの市場規模は3兆円といわれ、それに対してアニメ制作に関わる人は1万人から多くて2万人程度と言われています。一人にかかる負担が非常に大きいわけです。クリエイターの方々が教育に時間が割けないという実情も分かっているので、軽々しく協力してほしいとも言えず・・・多忙な合間を縫って時間を作ってくださった先生方には感謝しかありません。アニメ業界の方々にアドバイスいただくことも多く、アドバイスをしっかりサービスに生かすことで「協力して良かった」と皆さんに思っていただけるようにしたいですね。
日本のアニメの考え方=ismを世界へ、未来へ。
― 今後のビジョンやストーリーについてお聞かせください。
大谷 大阪トップランナー育成事業の認定により大阪市の“お墨付き”をもらうことで、このサービスが大阪の新しい「名産」になるといいなと思っています。また、将来的には自社でアニメスタジオを作ることも視野に入れています。私たちのサービスを受けた人たちが私たちを経由して何か仕事をしてくれるとか、弊社のアニメ部門のスタッフとして働いてくれるというようなストーリーを思い描いています。このままいくと、10年、20年後には国内で活躍するアニメーターがさらに減り、海外のスタジオやクリエイターが“日本っぽい”アニメを作ることになるかもしれません。そうすると「自分たちのやり方や文化を他国に真似られてしまった」という未来になりかねない。そういうことを避けるためにも、日本のアニメの考え方=“ism”の部分をきちんと伝えていくことが大事です。日本のアニメ制作の“ism”を知る海外のクリエイターが、日本のアニメ制作を支えながら共に発展できる、そんな未来を築いていきたいと考えています。
希望するマッチング&パートナー例
- 新たな教育コンテンツを求めている国内外の教育機関、行政機関
- 新人教育に困っている国内外のアニメ制作会社
- 国内外のアニメーターなどのクリエイター
- アニメ制作のスキル学習を情操教育と捉える方々