調査・アンケート・ニュース

2014年5月20日

医療機関アンケート調査結果

高齢者住宅新聞は、全国の病院や医療機関を対象に「2014年診療報酬改定に関するアンケート」を実施した。
調査によると、多くの医療機関が大幅な減収に陥ると回答。
訪問診療料の大幅な引き下げについては、一部では「改定はやむなし」との意見があったものの、反対の声が多数を占めた。

今回の診療報酬改定での在宅総管・特医総管について、同一建物居住者への訪問が大幅減算となった75.3%の医療機関は「減収になる」と回答した(図1)。

図1. 診療報酬改定による法人収入変化の見込みについて

また、「まったく納得できない」「あまり納得できない」と答えたのは合わせて約7割(図2)。その理由としては、「まじめに在宅医療を手掛けてきた医師まで巻き込まれた形になったから」(22.4%)、「いきなり4分の1の報酬額というのはあまりにも乱暴だから」(21.0%)、「国のこれまでの『病院から在宅へ』の施策に逆行するから」(19.0%)と多くの医療機関が批判的な見方を示した(図3)。

図2. 今回の報酬改定での大幅減算について納得できますか

図3. 図2に対して「あまり納得できない」「まったく納得できない」理由(複数回答)

一方「大幅減算について大いに納得できる」と回答した医療機関も一定数(6.4%)存在することが分かった。その理由として、「患者の囲い込みなど不自然な在宅医療が認められたから」が31.3%と最も多く、次いで「在宅医療利用者の中には通院が可能な人もいる」(24.4%)、「これまでの報酬が高すぎたから」(16.0%)となった(図4)。

図4. 図2に対して「大いに納得できる」「まあ納得できる」理由(複数回答)

今後の事業戦略について聞いたところ、「これまで通り提供を続ける」(40.0%)が多数を占めた。しかし「高齢者施設向けの在宅医療から撤退する」(7.9%)ところもあり、新規契約をしない(4件)、廃業する(3件)場合もあった。

図5. 今後の事業戦略(複数回答)

自由回答での意見は、「一部の不心得者のせいでまじめに在宅医療に取り組んでいる医療機関にしわ寄せが行くのは誠に遺憾」と悲痛な叫びが大勢を占めた。
「極端な報酬引き下げに困惑している。常識的に段階的に引き下げるべきだ」「在宅患者の利用は、要介護認定を活用して要介護3以上に限定するべき。自己負担は3割にして収入に応じて上限をつけるべきである」と、線引きを行うなど緩和措置が必要との意見もあった。
それに対し、反対側としては「コストが高額であり過剰なサービスを行う医療機関が多かったため、ある程度の減算が必要」「医療費高騰の原因であり、是正が必要」と従来の高コスト体質を指摘。また引き下げに関しては「納得できる部分もある。だが夜間も休日もまじめに対応して在宅医療を行っている医師が報われることを望む」と一定の理解を示した医療機関もある一方、「『事業戦略』という考え方がそもそもおかしい」と、医療をビジネスと考えること自体非難する声もあった。

今回の問題は医療機関の存続につながる大きな問題だ。だがその先でしわ寄せを最も受けるのは、診療を待つ患者だ。すべての人が必要な医療を受けられる制度設計が必要で、今後も議論を継続していかなければならない。

アンケートコメント(抜粋)

  • 特に認知症高齢者に対し、必要な医療を提供できなくなる。
  • 患者の囲い込みなど不自然な在宅医療が見受けられるというのであれば、そのような施設(医療機関)はペナルティーあるいは減点を課せばよい。在宅医療においては経営上の打撃が大きく、在宅医療は10年後退した。
  • 41年経営してきたが、廃業を考える。今までで最悪の改定だ。
  • 施設入所者と一般個人宅とのこの差は何ですか。一般と施設で疾患が変わるわけではなく、診療内容はほぼ同じ。同じ医療を提供するのに報酬が4分の1になるのは理解不能。移動の効率分の差はあると思うが診療にまったく差がない。逆に一般家庭より施設の方が問い合わせのTELがはるかに多い。また最近は施設に重症患者が多く入所している。納得できない。
  • 地域包括診療料も算定できる医療機関は限られ厳しすぎる。
  • 農村、僻地、都会(住宅地、オフィス街)などを考えず、地域包括診療料を画一的にあてはめることはいかがなものか。
  • 報酬体系をサンプルにすべき。外来と往診。基本的な2つの柱だけにもどすべきだ。
  • 今回の改定はやむをえない側面もあるが、患者切り捨てという感は否めない。
  • 全般的に厳しい改定ではあるが、2025年を見据えたドラスティックな改定で有意義であると考えられる。今後ますます医療と介護の連携を強化し、自院・自社の立つ位置を明確にすべきである。中途半端なサービスでは事業としては成り立たない。改革への方向性がしっかりと打ち出された。
  • 施設における在宅診療のあり方・やり方について再考するいい機会にはなると思う。

全国の診療所約9000件に独自に今回の診療報酬に関するアンケートを実施。平成26年2月にFAXでアンケートを送付。2月から3月にFAXで回答と回収した。有効回答数はそれぞれのグラフの右下に表示

*本調査結果は、2014年4月2日発行の高齢者住宅新聞より転載しています。
グラフは、掲載記事を元に当財団にて作成。

【新ビジネスの種】高齢者施設の訪問診療減少、在宅医療に関する診療報酬引下げ ~平成26年度診療報酬改定から~