2012年6月5日
アンケート実施結果【後半】】
アンケート実施結果【前半】
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(10)パソコンの保有台数に関する満足度
パソコンの保有台数に関する満足度 | 人数 |
---|---|
足りない | 30 |
やや足りない | 27 |
充分 | 22 |
やや充分 | 21 |
合計 | 100 |
パソコン台数に関して「足りない」と感じる施設は57%と半数を超える結果となる。システム導入について、その基礎となるパソコン自体の導入が遅れていることがわかる。
(11)今後導入を考えているシステム
今後導入を考えているシステム | 人数 |
---|---|
利用者管理システム(ソフト) | 34 |
パソコン | 6 |
シフト作成システム | 5 |
共有フォルダ | 3 |
レクリエーション立案ソフト | 3 |
デイ専用業務システム | 2 |
パワーポイント | 2 |
特になし | 18 |
不明 | 15 |
その他 | 14 |
合計 | 102 |
今後導入するとしたら、どのようなシステムやソフトウェアを導入したいか、という自由回答欄では「利用者の管理システムやソフトウェア」と答える人が最も多かった。現在様々な企業よりこれらのシステムやソフトウェアが販売されていることから、販売価格や機能などについてのミスマッチが生じていることがわかる。
(12)不足していると考えている設備機器
不足している設備機器 | 人数 |
---|---|
リハビリ機器 | 48 |
入浴設備 | 44 |
リフト設備 | 39 |
消臭機器 | 39 |
排泄設備 | 27 |
移動機器 | 23 |
その他 | 10 |
合計 | 230 |
(13)今後導入を考えている設備機器
今後導入を考えている設備機器 | 人数 |
---|---|
リハビリ機器 | 21 |
特になし | 14 |
特殊浴槽 | 10 |
消臭器機 | 7 |
リフト | 7 |
不明 | 6 |
手すり | 5 |
排泄器機 | 4 |
マッサージチェア | 3 |
床暖房 | 2 |
送迎車 | 2 |
空調 | 2 |
カラオケ機器 | 2 |
その他 | 20 |
合計 | 105 |
入浴、リハビリ、安全対策に関しても人員、人の技術、ノウハウでカバーしていることがわかる。「導入するとしたら、どのような設備機器を導入しますか」という質問に対して、「リハビリ機器や重度の利用者にも対応できる特殊浴槽」と回答する意見が多かった。
(14)介護の仕事で最も時間をとられていること
介護の仕事で最も時間をとられていること | 人数 |
---|---|
事務処理 | 30 |
入浴 | 27 |
排泄介助 | 16 |
送迎 | 9 |
利用者の対応 | 9 |
食事 | 6 |
レクリエーション | 6 |
その他 | 16 |
合計 | 119 |
介護の仕事で最も時間をとられていることでは、日誌や記録業務、介護請求作業などの「事務処理」が最も多かった。利用者との関わりや介護業務に時間をかけるのはもちろんのことだが、時間をとられると感じるのは「事務処理」である。「記録している時以外は利用者と一緒に行動をできるが、この時間作りだけが難しい」などの意見がある。
今回、デイサービスからの回答が多かったため、「デイサービスのご利用者様が一番楽しみにされている入浴に時間がかかっている」という意見も多かった。その他の意見では「施設内の清掃・利用者の洗濯・食事の配膳等の仕事もスタッフ内でこなさなければいけない」などの意見もあった。
(15)介護の仕事で最も困っていること
介護の仕事で最も困っていること | 人数 |
---|---|
利用者との関わり | 38 |
研修制度 | 16 |
職場環境 | 11 |
労働条件 | 10 |
人材不足 | 8 |
業務フロー | 6 |
経営 | 4 |
建物設備 | 2 |
その他 | 5 |
合計 | 100 |
介護の仕事で最も困る点では、「利用者の対応・関わり」と答える人が最も多かった。また、「大規模デイサービスにおいて、個々の利用者全員に満足していただく方法」「利用者との話題作りや、コミュニケーション能力がないこと」「認知症の施設のため、言ったことが伝わりにくく、スタッフ側が感情的になりやすい。それをプロとしてコントロールすることが難しく客観的に見て困っている」など、簡単には解決できない個々の利用者との関わりに対する課題が顕著に現れている。
さらに、利用者との時間を少しでも多くとるための対策として、現状の業務フローの改善や個々の知識、対応のレベルアップ、建物設備等の改善があげられている。
(16)施設の改善を希望する点
施設改善の希望点 | 人数 |
---|---|
従業員の改善 | 52 |
サービスの改善 | 46 |
設備の改善 | 39 |
業務フォローの改善 | 39 |
経営の改善 | 31 |
備品の改善 | 27 |
食事の改善 | 15 |
特になし | 4 |
その他 | 5 |
合計 | 258 |
施設の改善を希望する点については大きく偏ることのない回答結果となった。自由回答欄における具体的な意見では、「人事制度の充実」や「研修制度の充実」という回答が多く人手不足やスタッフの質の向上が課題であることがわかる。次いで、「建物や介護設備・備品の充実」という回答から建物の老朽化や経費削減からの設備の不足が課題となっていることがわかる。
また、レクリエーションやリハビリ等のサービスの質をあげていきたいと「顧客満足の追求」を課題にする施設もみられた。その他の意見としては、経営、業務フロー、食事の改善等があげられる。一部には利用者数の増加やデイサービス、老健施設にも関わらず重度の介護者が増えてきており、その対応を課題とする意見もあげられている。
(自由回答欄における具体的な回答の抜粋)
【社員人事制度や研修制度の充実】- 若い人員が定着せず、常時人員不足で心身の負担が大きすぎる。
- 利用者様への対応について、職員の基本スキル向上をどのようにすればよいのか。
- 正社員は雑務に追われ、研修、教育には手が回らない。
- 危険リスクを考えた場合、ハード面での不備や老朽化があり、そのことによる職員の負担もある。
- 費用がかかることは、消極的。何事も不十分になっている。元々有床診療所をリフォームしただけなので、水周り(浴室、洗面)は25年前のままで、老朽化に加え、使い勝手が介護用になっていない。
- トイレの高さもやや高く、背の小さい方は足が浮いてしまう。
- 一人一人にリハビリを行えたらなぁ・・・と思う。レクリエーションも遊びという感じだし、健康管理を含む「お世話」だけで、「機能維持」という観点にあまり目が向けられていない。
- 経営上、ギリギリの人員数で対応していることで、利用者への対応が疎かになってしまうことがあるため、横の連携を充実させ利用者処遇の向上を目指したい。
- 利用者に関わる時間が少なくなり、認知症の進行や、ADLの低下が顕著である。
(17)職場環境の満足度
職場環境の満足度 | 人数 |
---|---|
普通 | 32 |
不満 | 31 |
満足 | 27 |
大変不満 | 6 |
大変満足 | 4 |
合計 | 100 |
職場環境への不満の理由 | 人数 |
---|---|
給料が安い | 21 |
施設環境が整っていない | 19 |
職場での人間関係が良くない | 12 |
仕事が重労働である | 5 |
利用者様とコミュニケーションがうまくできない | 4 |
長時間労働である | 3 |
その他 | 9 |
合計 | 73 |
大変満足、満足と答えた人が31%に対し、不満、大変不満と答えた人が37%。
不満、大変不満であると答えた人にその理由を聞いたところ、最も多い理由として「給料が安い」「施設環境が整っていない」の2つがあげられた。その他の意見の大半は、「人員不足」となっている。
(18)業界の情報の入手元
業界の情報の入手元 | 人数 |
---|---|
インターネットで検索 | 67 |
業界向けの雑誌 | 25 |
業界での集まり | 24 |
業界向けのポータルサイト | 20 |
新聞、TV等の一般メディア | 12 |
その他 | 4 |
合計 | 152 |
業界の情報、介護知識、介護ニュース等の入手元はほとんどが「インターネットで検索」であった。手の空いた時に、また、急を要する内容でもすぐ調べることができるインターネットの利用はまさしく介護従事者にとって、有効な手段となっていることがわかる。
アンケート結果より抽出される課題と考察
(1)介護の仕事についての課題
時間を最も多くとられると感じている事務処理では、より現場のニーズにそった利用者管理ができるシステムやソフトウェアの開発が望まれる。
<想定されるシステム>
- 直感的なインターフェースでPCより簡単に使用できる、スマートフォンやタブレット端末を活用した利用者の管理システム
- 施設と在宅を効率的に繋ぐために、地域医療と連携した電子カルテや、薬剤データベースなどと連携したクラウド上での管理システム
今回のアンケート調査結果より考察すると、介護従事者にとって最も高いニーズは、利用者への質の高いサービスの提供、かつ、介護従事者にとって働きやすい環境を提供する施設環境の整備にある。今回対象になった100名は、サービスの品質をあげるための社員研修や施設設備の整備の必要性をあげる回答が多く、介護の仕事に対する意識が高いことがわかる。社員人事制度や教育制度を充実させて、介護スタッフのレベルをあげていくことももちろん重要であるが、RTを活用したシステム・介護機器の導入で、より快適な施設環境を提供できる可能性が大いに考えられるのではないだろうか。
まとめ
事務処理に関しても、業務管理ソフトや利用者管理システム等、ITやRTが導入されることによって時間と手間を短縮でき、その時間を利用者と接する時間に充当することが可能となる。
今回の調査で得られた結果は、従来の調査では抽出できなかった介護従事者の意見も多く、これらの意見から抽出される課題を解決するための仮説を立て、それを検証していくことが、介護分野への参入を検討しているRTを中心とした様々な業種の企業に必要であるといえる。
例えば、介護事業者向けの利用者管理システムやソフトウェアは、数多くの企業より発売されているが、小規模介護事業者では、ほとんど活用されていないことがアンケート結果より判明した。その理由は、システムやソフトウェアの不備ではなく、それを活用するためのパソコンが不足しているということがわかった。
これを解決するためには、パソコンよりも安価で導入しやすい携帯電話やタブレット端末を活用したソフトウェアの開発・販売などが、介護分野においては普及するという仮説が立てられる。
このように介護分野への参入を検討している企業と実際に介護現場で働く介護従事者との間には様々な認識のずれも生じていることも改めて判明した。
このような認識のずれを解消するべく介護分野へRTを導入するためには、介護関連製品・サービス開発企業と介護従事者を繋ぐ仕組みが必要であるといえる。
今後の介護分野における新製品・サービス開発を促進する仕組み本報告書が、今後の介護分野におけるRT活用による課題解決につながっていくことを心から願っている。